CxO発信サステナブルだーつ/(株)筑水キャニコム

CxO配信【 サステナブルだーつ】とは?

「協創的競争の場」(‘Ba’Fields of Co-Innovative Competition)では、会社、学校、組合、非営利組織、さらには、他の複合組織が活動する。その活動の要には、「何らかの最高責任者CxO」(Chief X Officer : CEO、CFO、CTOなど)がいる。まずは日本の各地へ旅をして、CxOの者たちから話を聞いてみよう。何を夢みて、何をやろうとしているのか、その汗と涙のひとしずくを切り取ってみよう。

今回のサステナブルだーつスポット(取材先)

地域福岡県うきは市
名称(株)筑水キャニコム
ホームページhttps://www.canycom.jp/
CxO包行 均 前CEO(現会長)
キーコンセプト#経営目標は顧客の笑顔を獲得 #企業存立の意義は雇用の安定 #ユーモアと人情というビジネスモデル
現在の業態農業・林業・土木建築用の機械や草刈機等の開発・生産・販売
編集日時2020.11.13

筑水キャニコム社前CEO(現会長)の包行均氏に取材をした。御社の経営理念は?

 顧客の声に徹底して耳を傾け、顧客が心から喜んでくれる製品を造り、顧客の笑顔を勝ち取ること。

前CEO(現会長)の包行均氏

 「荷台を上下できる運搬車があると、トラックに荷物を移し易いのだが・・」、「荷台の幅を簡単に変えられると、乗せるものの幅に合わせられるのだが・・」、「急勾配の斜面でも運搬できる車があればなぁ」等々、顧客の「ボヤキ」を聞き漏らさない。こうした「ボヤキ」には、「要望してもメーカーは応えてくれないだろうなぁ。でもあるといいなぁ・・」という、本当のニーズが現されている。
 他社が顧みない顧客ニーズに徹底して対応した製品を提供する。すべて自社内での開発、生産である。新たな製品を手にした顧客からは、笑顔が漏れる。それが会社の「収益」そのものである。
 会社の工場には、自社の製品を喜んでくれている顧客の写真が貼られている。それは会社の使命である、「顧客の笑顔の創造」を、社員が常に体感し、共有できることを意図している。
 製品の機能・品質を高め、顧客のニーズに応えることが重要である。しかし、製品の機能・品質だけ素晴らしくても、デザインやネーミングがなければ、真に魅力的な製品にはならない。デザインやネーミングにも拘り、ブランディングをしてお客様に届けることが、顧客が永く親しみ、かつ喜んでいただける製品の提供につながっていく。かつて、莫大な売上げにつながる大口のOEM契約の打診が大手メーカーからあった。しかし、キャニコム・ブランドを付さない事業は当社ではありえないと考え、その打診は断った。短期的・一時的利益を追求するよりも、自社ブランドの形成を伴った、地に足の付いた事業展開が重要と考えたからである。

製品の特性はどんなところにあるか?

 製品のデザインにも特徴を出すことに注力している。地味で重厚といったこれまでの作業機のイメージとはまったく異なる色彩、形状を創作し、結果としてすべての年齢層に好きになってもらえている。たとえば、展示会に来る顧客の子供たちは、必ずこの会社の草刈機にまたがりたがる。格好いいデザインに誘われるからである。子供たちにとっても、近未来の冒険マシーンを運転しているように写る。

草刈機「まさお」 
クローラー式農業用運搬機「ピンクレディ」

 製品のデザインにも特徴を出すことに注力している。地味で重厚といったこれまでの作業機のイメージとはまったく異なる色彩、形状を創作し、結果としてすべての年齢層に好きになってもらえている。たとえば、展示会に来る顧客の子供たちは、必ずこの会社の草刈機にまたがりたがる。格好いいデザインに誘われるからである。子供たちにとっても、近未来の冒険マシーンを運転しているように写る。

包行さんの「信念」は?

 売上高や利益を伸ばすことだけが、企業が存在する意義のすべてとは思っていない。それらは、社会が自分たちの会社をどのように思い、信頼してくれているかということの結果に過ぎない。自分としては、顧客と社員に幸せをもたらすことがより重要と考えている。地域での安定した雇用を創出していくことは、そのうえでも大きな意味を持つ。
 かといって、そういった経営の数値的意義や、新しいビジネスの展開、経営方針などについて、自身の考えに固執することはないようにと、常に、自戒している。
 素直で、謙虚であれ。そして同時に、自身の「信念」を大事にすることが、私の「信念」でもある。
 「幸い、後継の現CEOは、私以上に広いネットワークと視野を持っている。将来が楽しみである」と包行氏は語る。

(編集:2020.11.13, 石井 康之)

プロフィール

石井 康之
石井 康之
IP経済研究所 所長、公立諏訪東京理科大学嘱託教授、工学博士

一橋大学経済学部卒業後、東京海上火災保険(株)(現在の東京海上ホールディングス)に入社。営業、営業企画を経て、(財)知的財産研究所に出向。その後、グループ内知的財産マネジメントを統括する。その後、東京理科大学教授に就任。知的財産経済論、知的財産評価などを講義。2016年にIP経済研究所を創設し、現在に至る