CxO発信サステナブルだーつ/(有)芭蕉園

CxO配信【 サステナブルだーつ】とは?

「協創的競争の場」(‘Ba’Fields of Co-Innovative Competition)では、会社、学校、組合、非営利組織、さらには、他の複合組織が活動する。その活動の要には、「何らかの最高責任者CxO」(Chief X Officer : CEO、CFO、CTOなど)がいる。まずは日本の各地へ旅をして、CxOの者たちから話を聞いてみよう。何を夢みて、何をやろうとしているのか、その汗と涙のひとしずくを切り取ってみよう。

今回のサステナブルだーつスポット(取材先)

地域宮城県仙台市
名称(有)芭蕉園
ホームページhttps://bashoen.jp/
CxO関孚 代表取締役(CEO)/ 関裕美子(COO)
キーコンセプト#創業元禄元年 #日常の食文化 #繋いで繋ぐ #プレフレイル
現在の業態日本茶卸し販売
取材日時2022.4.23

“日常の食文化を繋ぐこと”をコンセプトに展開している、1688年元禄元年創業の「芭蕉園」を関孚(せき たかし)氏に聞いてみた・・・・

 江戸初期元禄元年(1688年)に宮城の地で商いを始め、穀物商、米問屋を続けてきて、昭和16年(1941年) 戦争という国難の機に先代関清が「芭蕉園」を設立し、静岡産や岐阜産の日本茶による「日常の食文化」を繋ぐことを始めた。創業から333年の老舗中の老舗である。

 老舗としての古くからの繋がりを大切にしながら、そして、新しい繋がりを創りだすことは、遠くにいる者の目線からすると、あえて、「美談の一つ」と錯覚をしてしまう。しかし、持続することの「大切さ」のみならず、「大変さ」の苦労話も、今回伺った。

 関孚(せきたかし)氏、曰く、『我が家では、「仙台空襲7月10日」をご先祖さんに感謝、戦争を忘れない日として大切にしています。事業形態は変わっても「地元宮城・仙台の人」に支えられた地元密着型の商いを展(の)ばしつづけてきました。農家・製造問屋・販売の三者が同じ方向を向き、農家との間では土づくりから始まり施肥を適宜捉え直し、そして、商いの信頼の関係を築き、長い経験の積み重ねからの賜り物である”三位一体”となることを大切にしてきました。当然のこと、そのことも大変なことなのですが、さらに、日本茶の淹れ方をお手伝いしつつお客さんとの繋がりを築き、そして、日常の食文化を大切に思う人々との繋がりも含めて、”五位一体”の気軽に立ち寄れる店を心がけています。』 

三女とその仲間が描く夢、そして、繋いで繋ぐこと・・・

 三女の関裕美子氏は、日常・非日常との繋がりを大切にしている。非日常というのは、若者たちの趣味・娯楽、こだわりの時間、特別なときのことである。非日常と日常を繋ぐこと、つまり、「1日1服日本茶計画」(毎日の摂取飲料の1杯を日本茶に置き換えてもらう計画)を推進したいという。「煎茶のおうち時間を愉しみ」そして「石臼挽き抹茶を生活に取り入れる」こと、それが「芭蕉園」の新しい事業になっている。

 ちなみに、「急須で淹れる煎茶のおいしさの広がり」 という場合、 「い(淹)れる」は、単に水道の蛇口をひねって、茶の葉を水でひたせばそれで良いのではなく、煎茶をぐつぐつと「煎じる」のでもなく。そして、茶道のお点前を踏まえれば良いのでもなく、淡々と毎日の繰返しの中に「急須で淹れる煎茶のおいしさ」に覚醒すること、とのことである。

 さらに、関裕美子氏は、妊婦さんとの繋がりも事業化している。「Mama rela tea(ママリラティー)」という商品である。 妊婦さんでも安心して毎日飲むことが出来る「通常のお茶のカフェイン量の1/3のお茶」を開発した。カフェインの摂取量は意外と知られていない。ほうじ茶、煎茶、緑茶は、20mg/100ml。ドリップコーヒーは60mg/100mlである。妊婦さんとの関係では、カフェインは過剰に摂取しないことが第一なのであるが、例えば、英国食品基準庁(FSA)では、1日の目安を200mg(マグカップでコーヒー2杯相当)にした方が良いとしている()。「Mama rela tea」は、そのような「気配りの積み重ね」から成り立っている。

(※)https://webarchive.nationalarchives.gov.uk/ukgwa/20120403152025/http://www.food.gov.uk/news/newsarchive/2008/nov/caffeinenov08 

さらに、新たな食文化への繋ぎ手として・・・

 心身の健康との繋がりを大切にすることによって、芭蕉園の新たな時代を作り出しつつある。例えば、緑茶カテキンはフレイル対策に良いという論文もあるので、「フレイル」状態にある方々や「プレフレイル(Pre-Frailty)」の人たちにもお茶お勧めしたいと考えている(※)。なお、「プレフレイル」とは、フレイル(虚弱や要介護の状態)にまだなっていない健康な状態のことである。元来、お茶は医食同源の要の一つであり、「一服、二服」と数えられ、長生きを支えるものとされてきた。科学的な成果に支えられた新たな繋ぎ手として役割を期待する。

(※)金沢大学・医薬保険研究域医学系や国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所での研究グループによる論文がある。
https://www.kanazawa-u.ac.jp/rd/3458?msclkid=093ebf7dc28511ec866dd247163f95a0
https://sndj-web.jp/news/001691.php?msclkid=2a329188c28811ec9b61cf8aabd99165

 さらに、今年から、お寺でお茶会をする際の会費の一部をもちいて、内戦状態にある国や発展途上国へのドクター派遣など医療支援をしている団体を助成したり、国内外の被災地支援を行っている「公益財団法人 風に立つライオン基金」に寄付する(※)。関裕美子氏は、ささやかな、小さな取組みからの始発である、という。されど、「人」と「お茶」と「人」との輪を少しずつ広げながら、楽しみながら持続可能な形で地域社会へ貢献をすることが、元禄元年から続く老舗の今を守る方々の生きざまなのであろう。

(※) https://lion.or.jp/index.html

 (取材: 2022.4.23, 土屋雄大)

プロフィール

土屋 雄大
土屋 雄大
青山学院大学大学院法学研究科博士課程修了。ビジネスとリーガルの融合研究と知的資産連携の環境づくりに関心を持つ。現在は、健康医療分野での臨床情報を体系的に把握するデータベース事業に携わる。協創&競争サスティナビリティ学会編集委員会幹事。