CxO発信サステナブルだーつ/(有)山形工房

CxO配信【 サステナブルだーつ】とは?

「協創的競争の場」(‘Ba’Fields of Co-Innovative Competition)では、会社、学校、組合、非営利組織、さらには、他の複合組織が活動する。その活動の要には、「何らかの最高責任者CxO」(Chief X Officer : CEO、CFO、CTOなど)がいる。まずは日本の各地へ旅をして、CxOの者たちから話を聞いてみよう。何を夢みて、何をやろうとしているのか、その汗と涙のひとしずくを切り取ってみよう。

今回のサステナブルだーつスポット(取材先)

地域山形県長井市
名称(有)山形工房
ホームページhttps://www.nuchima-su.co.jp/
CxO梅津雄治 社長(CEO)
キーコンセプト#匠の一品 #福祉けん玉 #競技用けん玉 #木地師の技と文化
現在の業態けん玉を始めとする木工製品(野球用品などを含む製品)の製造
取材日時2022.2.28

“Kendama”をコンセプトに展開している、1973年創業の「山形工房」を梅津雄治氏に聞いてみた・・・・

 山形工房(2005年山形博進社から現社名に変更)は、1977年から競技用けん玉「富士」を製造している。2007年には、けん玉意匠登録、実用新案取得を行い、2009年には、「大空」の登録商標を使い始め、そして、2013年には、その国際商標登録(米国、中国、EU等)へと展開をしている。また、2012年には、日本玩具協会安全基準(STマーク)を使用し始め、さらに、国際的なビジネス展開を進めるためEU加盟各国の安全基準を満たすCEマークも取得している。現在では、日本けん玉協会認定製品にとどまらず、フィットネス、ダイエット、エクササイズとの組合せによる福祉けん玉等の多様な市場を切り拓こうとしている。

 山形工房は、今日までの長年に渡たる国内及び国際的な業績をもって、地域振興への貢献等の表彰を含め、多々なる輝かしい発展を遂げている。日本の「けん玉」から国際的な「KENDAMA」を支える「もの作り」拠点でありつつ、従前のビジネス・コンセプトを越えた新たな取り組みに挑戦している企業である。

梅津雄治 社長(CEO)
競技用けん玉
けん玉作り48年の歴史
木地師の技と文化の継承

「木地師の技と文化」を繋いで繋ぐことへの熱い思い・・・

 多くの者が「けん玉」を知っているだろう。一度は遊んだことがある日本の伝統的な遊びである「道具」である。1777年ころフランス貴族の遊び「bilboquet(ビルボケ)」が長崎に伝わりお座敷遊びとして拡がったらしいが、『拳会角力絵図』(1809)には「ヒ玉拳すくい」、そして、『嬉遊笑覧』(1830)には「拳玉」と記載されている。公益社団法人日本けん玉協会のHP(https://kendama.or.jp/archives/history/)を閲覧すると良いだろう。

 木地師の始発は定かではないが、平安時代の後期からの生業だったのであろう。山形の木地師については、野口一雄氏によると、「元亀三年壬申四月八日」(1572年)の紀年名がある木地物もあるとのことである(※1)。 特に、江戸時代から明治時代初年まで「手挽ろくろ」という道具を使い、多種多様な木製品を創る職人集団が活躍し、「木地屋」と称されてきた。木地師文化のことを研究調査する学会もある(※2)。

(※1)https://crd.ndl.go.jp/reference/modules/d3ndlcrdentry/index.php?page=ref_view&id=1000233437

(※2)http://www.tvt.ne.jp/~kijishi/wood/

 「競技用けん玉」とは、級・段位試験を受検する際に、そして、全国各地で行われる公式のけん玉大会に参加する際に使用することができるけん玉のことである。「プレイヤーの技の精度100分の1ミリを追求する」という。「匠の一品」を創り出すために、「山形工房マイスター制度」(約60工程を4ランクの技能レベルに分けて標準化し、その熟練度をはかる制度)を自ら開発し、品質にこだわった運用を行っている。

 また、「福祉けん玉」とは、医学的にフレイルな状態(虚弱な満たされていない状態)にある方々の健康状態を取り戻す手助けをする際に使用するけん玉のことである。リハビリテーションの中に取り入れるのは一つの流れであると思う。活用事例や山形工房の「けん玉作り48年の歴史」から、新たな可能性が垣間見られる。

社長と仲間とが描く夢、そして、・・・

 山形工房の強みは、「モノ(物、もの、者)」と「コト(事、こと、異)」を繋ぐことにある。「もの」とは、商標・意匠・特許などの知財であり、海外販路にまで関わる多様なノウハウのことであり、「物と者」の繋がり強める役割を成す。また、「こと」とはビジネスの場、地域振興の場のことであり、「事と異」を繋ぐ切っ掛けを創るのに必要不可欠である。山形工房は木地師文化を継承し現在のかたちとなり、子どもからお年寄りまで楽しめる文化を繋ぐことだけではなく、競技スポーツの発展を支えて繋ぐ「モノ」と「コト」に注力してきた。

 社長の梅津氏とその仲間が描く夢、そして、彼らの、笑顔、それが世界へと繋がる。社長の笑顔の中にある目の奥に、鋭さを感じる。彼の歴史を感じさせる瞬間でもあった。 けん玉、されど、けん玉。たまには、けん玉にチャレンジするのも良いのではないだろうか。

 (取材: 2022.2.28, 土屋雄大)

プロフィール

土屋 雄大
土屋 雄大
青山学院大学大学院法学研究科博士課程修了。ビジネスとリーガルの融合研究と知的資産連携の環境づくりに関心を持つ。現在は、健康医療分野での臨床情報を体系的に把握するデータベース事業に携わる。協創&競争サスティナビリティ学会編集委員会幹事。